FTR100Kを走った理由
表題の通りFTR100Kを走ってきた。信越五岳以外を走るのは多分2014年の福岡マラソン以来のこと。1年に1大会しか走っていなかった僕が今回FTR100Kを走ったのは、2024年の信越五岳(100マイル)に再チャレンジするための参加資格を取るという(ややリスペクトに欠けた)ものだった。
信越五岳100マイル(2023)大会概要より:過去4年間(2019年1月1日~2023年4月11日)で距離100km以上の国内外のトレイルランニングレース(※)を制限時間内に1レース以上を完走している方(全数確認)
信越五岳は約163kmで獲得標高が約7,100m、FTR100Kは約105kmで6,831m、制限時間が33時間/31時間とずいぶん違っている。ざっくりいうと信越は走るコースで、FTRは登って下っての繰り返し。僕は走れるコースのほうが好き(得意ではない)というか、登るコースに対する苦手意識がめちゃくちゃ強い。
少しだけ信越の話を。2023年9月の信越に失敗した僕は翌日に再チャレンジを決めた。ただし前述の参加資格(規定の期間内に100kmの完走実績が必要)ということもあり、2024年の7月にONTAKE100を走って9月の信越でボランティアをやって2025年大会にチャレンジという流れが現実的に思えたが、できれば2024年に再チャレンジしたい。そのためには信越のエントリーが始まるであろう4月より前に100キロを完走する必要がある。
その時点で分かっていたのは、2024年3月の広島湾岸トレイル。毎回ペーサーをやってくれる梅ちゃんの住む広島というのも何だか運命かもなんて思ってたけど、3月という後が無い時期に広島に遠征して結果を出せる自信が正直無いことと、109kmで6,900mというプロファイルも自分が完走出来る気がしなかった。
そで教えてもらったのが11月のFTR100K、まさか開催2ヶ月前だというのにエントリーできる大会があるとは思わなかった。105kmの6,831mのギザギザ(小刻みな登り下りての繰り返し)が気になるが、信越に向けて準備してきた訳だから、何とかなるかもって思うことにして、1日くらい考えて9/21にエントリーした。
信越〜FTRまでの2ヶ月の計画とハプニング
信越が消化不良だったこともあって、身体は元気だった。元気だったので信越から帰ってすぐに再び走り始めた。結局はこれは間違いだったのだが…。まあ、インターバルなどのハードなやつは控えた。
この2ヶ月の間の予定としては、普段はやらない試走に早めに行って、登り下りが連続するギザギザ具合やスリッピーという噂の路面を確認し、その後は大倉尾根に何度か通って上り耐性をつけるつもりでいた。
ところが、10月に入ったあたりから疲れている自分に気づき始めた。普通はロングレースを走ったら1週間や2週間は休むものらしい。お世話になってる整骨院の方とも相談して少し休もうということにした。ちょうど出張などもあったので良いタイミングだったと思う。
それから2週間ほど経った10/17、FTRに向けての準備を再開しようと思った矢先の出来事でした。葉山のトレイル上の濡れた木橋で強烈に転倒。下った先にあった木橋で思考が間に合わず乗った瞬間に転んだ。埼玉の峠で啓介のFDがオイルに乗ったときと同じ(イニシャルDネタです)。転んだ直後うずくまってしまって立てない程の衝撃。この時に只事じゃ無いとは思ったが、まさか1ヶ月も痛みが続くとは思わなかった。
肋骨の骨折には有効な治療法がないとの噂もあり、診察を受けていないのでなんとも言えないものの、恐らく肋骨のヒビ(骨折)っぽく、どうやら安静にするしかないらしい。やらかして数日間は何もしなくても痛みがあり、その後も寝起きや咳、笑ったりすると強烈な痛みが響いた。
整形外科の診療を否定するものではありません。当たり前ですが、各自の判断で診療を検討しましょう。
2週間ほど経過すると、日常生活ではほぼ痛みを感じないものの、走ると振動で痛みを感じる。ジョグくらいと思い走り始めても、最初の1キロで諦めて後はウォーキングで過ごす。これを何度かやってみたけど、なかなか難しい。
なんとか違和感なく走れるようになったのは出発前日だった。当初考えていた登り対策どころかジョグすら出来ていないけど、幸いFTR100Kは105kmで制限時間は31時間もある。ゆっくりでも進み続けれれば何とかなると思い込むことにして会場向かった。
ダメ元で出走を決意/ホテルはキャンセルして車中泊
FTRの会場は秩父駅近くの羊山公園、前日受付必須でスタートは土曜の朝7時。宿泊施設はそれほど多くなく、エントリー時には車で30分ほど離れたところにホテルを確保していたものの、今回の完走は正直怪しい。コスト面でのダメージを抑えるためにホテルはキャンセルしてプリウスに一人で車中泊することにした。
ちなみに宿泊施設は、ビジネスホテル以外にもゴルフ場のホテル?など、探せば出てくるらしい。じゃらんなどで探すだけではなく、秩父の観光協会などに問い合わせてもるのも良いのかもしれない。
車中泊は会場から約2キロ離れた参加者用の駐車場で、エントリー時に申し込み(有料)が必要。車中泊しなくても走ってる間に駐車しておくスペースが必要なのでクルマで行く人は申し込んでおく必要がある。スタート前とフィニッシュ後には、この駐車場から会場までのシャトルバス(マイクロバス)が数台運行されストレスなく移動が出来るようになっている。
この広大な駐車スペース(セメント会社の敷地?)は仮設のトイレとファミリーマートが近いので、最悪な環境ではない。向かい側に大きなモールが見えるものの、飲食店は31アイス、タリーズコーヒー、ドミノピザ、ミスド、パン屋さんという極めて偏ったラインナップしかない。ヤオコー(スーパー)が併設されているので買い出しには使えそうだけど、事前に購入しておいたほうが良いと思う。
フリースのパンツ、マイクロパフ(化繊ダウン)、寝袋、マットを敷いた車中泊は想像より寒さを感じることもなく、狭さを除けば快適だった。ただ僕は比較的どこでも寝れるタイプなので、ホテル泊のほうが段違いで快適なのは間違いないだろう。
前日受付〜スタート
受付後にニューハレブースに行って、いつもの足首と、ふくらはぎ、前もも、腰にテーピングしてもらう。ニューハレの近江さんによると、FTRや彩の国では信越五岳などの走れるコースとは異なる箇所にトラブルが出やすいそうだ。
スタートの1時間前くらいにマイクロバスに乗り5分ほどで会場入り。当たり前だが寒い。パタゴニアのマイクロパフ(化繊ダウン)を着用して時間を過ごす。スタート15分ほど前にドロップバッグを預けてスタート。
なんだろう、この緊張感のなさ。信越のときと全く違う。何の準備もできておらず、ダメ元でスタートするからだろう。準備が整っていないのはNGだけど、これくらい気負わずスタートできたほうが楽なのかもしれない。Youtubeを何度か見たものの、コースも全く知らないことだし、今回は1区間ずつ片付けるように考えることにした。
スタート時のウエアは、パタゴニアのキャプリーントレイル(半袖)にストライダープロショーツ。シューズはHOKAのスピードゴート5を履く。体温調整はアームウォーマー、手袋、フーディニエアの着脱で行う。
個人的な感覚では、このエリアの路面は軟らかく若干スリッピーな印象で、グリップの悪いシューズでは厳しいのではないだろうか。ルートの途中には岩場や露出した根っこが続くところもあり雨が降ると大変なことになりそう。
タイムテーブル
今回もタイムテーブルを作成。とはいえ何もデータが無いため、2022年大会のリザルトから30〜31時間のフィニッシュをした6〜7人のデータのアベレージを算出。少し早いAから、ギリギリのCまで3種類を作成した。
9月の信越での失敗を活かし、タイムテーブルは詳細に、事前に過去のFTRを走った方や試走した方のYoutubeを見て出来るだけ情報を集めるようにした。
信越までのテーマは『NO EXCUSES』当日に言い訳しないように準備をしっかり行うということ。しかし、今回はどう考えても『NO EXCUSES』ではない。ダメ元で最後まで粘るという目標に合わせて『NEVER GIVEUP』ということに決定。
結果としては、計画通りに進んでいたものの、80kmくらいから遅れ始める。左の膝が何となく痛くなり、その後に左右の前もも(外側)がハッキリと痛むようになってきた。登れるけど下れない。平地は走れるときは走るけど、そこまで頑張れず。ただし時間はあったので、あせらずマイペースで進む感じでフィニッシュ。
B予定 | リザルト | |
A2 正丸駅 | 4:25:35 | 4:12:33 |
A3 子の権現 | 5:45:44 | 5:31:39 |
A4 名栗河川広場 | 7:09:48 | 6:57:18 |
A5 ゆのた | 11:12:37 | 10:51:32 |
A6 子の権現 | 14:56:41 | 14:18:34 |
A7 長念寺 | 18:59:46 | 17:56:37 |
A8 高山 | 23:39:52 | 23:24:41 |
A9 県民の森 | 26:30:03 | 26:38:24 |
FINISH (31時間制限) | 29:09:27 | 29:40:46 |
補給プラン
今回の補給プランは、1時間に1つのジェル。2時間に1つのソルトスティック。エイドが充実しているとはいえ、それは3〜4時間に1箇所。少なくともエイドだけでは足りるとは思えない。
ジェルは信越で大量に残ったアスリチューンをメインに、減った分を入手しやすいメダリストを追加。結果的にこれはダメだった。中盤くらいからメダリストの粘度や味が嫌になってきた。何が原因か分からないけどムカムカする気がしてガスター10を飲む。A8でジェルを詰め替えたときに、残っているアスリチューンを全てザックの前側に、メダリストはザックに入れた。アスリチューンがアマゾンプライムかで買えることを望む。
いま思えば、気持ち悪くなったのはカフェインの摂り過ぎかもしれない。夜中に摂ったカフェインピル(0.1mg)、コーヒーゼリー(0.07mg)、レッドブル(0.1mg)、まあ当たり前なんだけどカフェイン効かないって次々に追加しちゃうのは控えたほうが良さそう。
A3からがFTR
A3のスタッフさんに教えてもらったのは、本当のFTRはA3かららしい(笑)まあ確かに登り下りの激しさは、そのあたりから始まる気がする。A3までは前菜みたいなもんらしいが、僕なんか前菜で結構お腹一杯なんですけどね…。
僕くらいのレベルであれば、ドロップバッグのあるA5以降のエイドでは身体が冷えてしまうリスクが高い。FTRのエイドはメニューも豊富で、居心地が良いので長居しがちだが、極力滞在時間を減らしつつ、エイドで身体を冷やさないようなウエアを携帯するのも良いと思う。
最も寒かったのがA7を出た直後。一度エイドを出たものの身体が震え始めたので、すぐに引き返してウエアリングを大きく変えた。ただし、登りが続くので簡単に温まってくる。そうなると今度は汗冷えを意識しないといけない。温まったら迷わず脱いだ方が良い。11月中旬に開催されるFTR100Kのウエアリングは意外と面倒なのかもしれない。
A8の位置には参った。公式GPXファイルと若干異なる下りがあったり、集落に降りたところにエイドがあると勘違いしてしまうと、そこから先がとにかく長い。スイッチバックを延々と登り、神社の階段を登ってもまだ見えない。実際は神社のある敷地の上にA8エイドはあった。ちょうど胃のムカムカを感じていたのとトイレに行きたかったので、なかなかエイドに辿り着けないのは精神的にツラかった。
夜パートの過ごしかた
初めての奥武蔵エリアは、すごくテクニカルなところは無かったけど、落ちたらヤバそうなところも多く、夜の時間帯は特に注意が必要な印象があった。熊も生存しているエリアということで、できれば夜は1人で走りたくなかった。
はっきりと覚えてはいないけど、まだ日付が変わっていなかった頃に、後ろを走ってる男性と少し会話をした。同年代くらいの話しやすい方だったし、当たり障りのない話をしながら進んでいく。自分が最も眠いであろう3〜4時の時間帯まで一緒に走れると助かるなーなんて考えていた。
結局はその方と一緒にフィニッシュした。序盤は僕が前でペースを作れてたと思うけど、前ももの痛みを感じ始めてからは、このKさんに完全にお世話になった。常に寄り添って走ってくれるという訳ではなく少し前を走る感じで、後ろを振り返りはしないんだけど、僕の位置をちゃんと把握している感じ。すごく頼りになるペーサーだった。Kさんとは近いうちに逗子で走って一杯やろうって話になっていて楽しみ。
コースロストのリスクは、準備をしておけば少ない(はず)
要所要所にパウチやコーステープがぶら下がっているし、夜間パートにはコーステープにリフレクターが貼られている。全体的にはコースロストの可能性は高くないと思われるが、コーステープが少なく感じた箇所もあり、公式サイトでダウンロードできるGPXファイルをGPSウォッチやスマホのアプリに入れておく必要があると思う。僕はカロス(APEX 2 Pro)でルートナビを併用。ただしバッテリーの持ちは確実に悪くなるため注意が必要。僕はドロップバッグポイントで20-30分ほど充電したため、フィニッシュ時は60%以上残っていた。
反省:エイドワーク短縮の準備
ドロップバッグを使って、1人で参加するのは覚えていないくらい久々(たぶん2014以来)。全く慣れていない寒さを感じる時期ということで、とりあえず何でも持っていく作戦で、荷物が多いし、どこにあるか分からないし、想像以上に段取りが悪かった。ドロップバッグのあるA5には45分くらい滞在してたと思う。
こうなると体も冷えてしまうので、余計なトラブルが起こる可能性が高まる。事前に何をするのか、考えるだけではなく、優先順位を付けてメモしていたほうが良い。ついでにジップロックはメーカー品の新しいものを使いましょう。なかなか新しいものに換えれない貧乏性な僕の場合、エイドで破けるというハプニングが2度も起こりました…。